2005年03月20日

「ハリー・ポッター」は本にあらず?

 「ハリー・ポッターが好き」、「ハリー・ポッターのファン」という発言の中身の意味するところは一つではなくなっているようです。つまり、「ハリー・ポッター」は本のタイトルのみを指すだけでなく、映画、グッズ、さらには映画出演の俳優が好きだということまで言及できる広義の言葉に変化してきているように感じます。何もこれは「ハリー・ポッター」に限ったことではありません。例えば「くまのプーさんが好き」「ピーターラビットが好き」という発言は、原作である本が好きだということを指している場合ももちろんあるでしょうが、実際にはプーさん、ピーターラビットのイラストのついたグッズを集めているという意味を指していることのほうが多いのではないかと思います。ただ、ハリー・ポッターの場合、本の出版に際して各国でイラストが異なったため、当初売り出されたアメリカ版のイラストのついたグッズは成功とは言い切れなかったと思います。しかし、映画化により世界各国で共通のハリー・ポッター世界のイメージが広く浸透していきました。映画と同じものを身に着けること、映画のイメージを基調としたグッズを持つことで、その姿を見れば即「ハリー・ポッターのファン」を示すことができるのです。だからメディアで紹介したがるのはホグワーツの制服に身を包み、しなやかに杖を振る魔法使いに扮する人々なのです。そしてそれこそが「ハリー・ポッターのファン=ポッタリアン」として社会的に認知されつつある姿ではないでしょうか。
 本から入ったファン、そして今でも本のファンであるわたしは、ひとところ映画ブーム、グッズに沸くニュースを見ると複雑な想いを感じました。本も映画もグッズ収集もすべてにわたって興味を示さないとファンとは言えなくなって来ているのではないだろうか。その意味ではわたしは「ハリー・ポッターのファン」には入らないのではないだろうかと。

 『小説「ハリー・ポッター」探求』(パウル・ビュルヴェニヒ著/谷口伊兵衛訳 而立書房)にも興味深いことが書いてあります。
『ハリー・ポッター』の成功を当初から完璧に働いた商品化活動に帰するのも、同じく誤りであろう。『ハリー・ポッター』の効果的な商品宣伝活動は、これが成功するためのもう一つの要因に過ぎないのだ。しかもこういう商品化活動は「ハリー・ポッターの魅力」に寄与しなかったのであって、その逆だったのである。(上掲書 P197)

 この本では「ハリー・ポッターの魅力」について様々な角度から論じています。巧みに構築されたプロット、言葉遊び、ユーモアのある対話、着想の豊富さなどが本の魅力はひとことでは言い尽くせないと述べています。アメリカでは本の発売当初からグッズが販売されていたようですが、グッズは本の内容ではなく「ハリー・ポッターの認知度」を高めたと思います。グッズは本を読んだファン、映画を見たファンが「自身はハリーのファンである」ことを表現する手段になっていると思います。映画化により更にファンの意味は多重になり、シリーズの本を読む人だけがハリー・ポッターのファンであった時代はとうに終わっているのです。本を読んだ人より映画は見たという人のほうが多そうですよね。本にはまるもよし、グッズを集めるもよし、映画に夢中になるもよし。ハリーのファンのかたちはひとつではないのです。

 自身がハリー・ポッターを好きであるというかたちは、多種多様になっているのでしょう。もはや本を読んだことがない「ハリー・ポッターのファン」である人々が存在するのかもしれません。グッズと映画と本、どの程度相関関係があるのかわかりませんが、グッズと映画の結びつきは密着だと思います。くまのプーさんのようにグッズのみが一人歩きする時代は果たしてやってくるのでしょうか?

 「ハリー・ポッターが好き」、という言葉の意味するところは広いのです。ホグワーツの制服を着ていないファンもここにいます(笑)

※この記事は2004/6/17に書いたものです。
posted by kmy at 09:13| Comment(6) | TrackBack(2) | 物語周辺考察 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
こんにちは。
私はやっぱりどんな形でも、ファンには本を読んで欲しいですね。この頃思いますが、原作の宣伝的な位置に映画があると思ってしまいます。
本当の内容は本の中にしか無く、もっと複雑で絡み合っていて、壮大な世界なのに、映画を観てそれで終わりではあまりにももったいない気がしてなりませんね。

ハウルの動く城・・・私の母と妹は映画を観てきましたが、私はまだ観ていません。原作をしっかり読んでからと思い、今読書中です。たとえれば、映画だけを先に楽しんでしまえば、それは氷山の一角というふうに捉えてしまいます。

物語の本当のあらすじを知らずにファンとは言い難いと私は思ってしまいますね。ファンなら教えてよ〜と言われても答えられないという事ですしね^^;

お邪魔しました。
Posted by ミドル at 2005年04月27日 09:21
コメント頂きまして、ありがとうございます♪

本が面白いからこそ、映画化になるものだと思うのですが、映画だけ見たという方のが多いのでしょうか、どうなのでしょうか……気になるところです。それでも物語の醍醐味は本ならでは、と思っています。

『魔法使いと火の悪魔』、以前読んだときに非常に面白かったのですが、なぜか内容を覚えていないのです(大汗)『アブダラと魔法の絨毯』のほうが印象が強いのですが、本を読んでしまうと割りと満足してしまって、映画を見ないまま終わることが多いです。映画と原作と両方好きなのは『ジュマンジ』です。と、雑談させていただきました。
いつもありがとうございます。
Posted by kmy at 2005年04月28日 11:11
はじめまして。
私はハリーポッターの大ファンです。
よく学校の図書室でハリーポッターの本をかります。
やっぱり、ハリーポッターはおもしろいですよね。
一緒に借りる友達もいっぱいいて、大評判です。
これからもハリーポッターを読んでいきたいです!
違う話になりますが、ホームページアドレスは、私の日記です。
コメントくださるとうれしいです(^^)
Posted by ネネ at 2005年06月04日 20:53
ネネさん、はじめまして。
重複コメントは削除させていただきました。
ファンの形が多様化というのは、映画化で特に感じる部分ですが、やはり、本が一番面白いと思うものです。本を詳細に読むことで、さらにイメージや世界の広がる話だと感じております。また、感想などお聞かせくださいね。
Posted by kmy at 2005年06月05日 08:19
 楽しく読ませていただきました。kmyさんは筋金入りのポッタりアンですね。素晴らしい。
 実は「雨降り木曜日」のほうへ数分前コメントとTB送らせていただいたのですが、もしかしてネタばれになっているのでは・・・と少し心配になりました。自分としては話の確信は外して書いたつもりでしたが、ネタばれと判断されたなら遠慮なく外してください。また、遊びに来させていただきます。
Posted by ぴぐもん at 2005年11月04日 21:20
ぴぐもんさん、コメント光栄です。5年以上同じ本を読み続ける、というのはそれはそれで自分の一部分にハリーが吸収されているようでもあります。
ネタばれは最重要な死の部分、筋として知らないほうがよいあの人の行動などははずされてありますので、こちらからTBを辿っていかれても、レビュー的に読めると思います。
6巻の感想などは書こう書こうと思っているうちに、4、5巻の読み返しも同時に行なったりしていて、いつまでたってもなかなか更新されないという悪循環です。またお話聞かせてくださいね。
Posted by kmy at 2005年11月05日 19:26
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ハリー・ポッターにはまるわけ
Excerpt:  さて、何からはじめよう・・・あまりにもありきたりだけど、今をときめく物語といっ
Weblog: ぴぐもん's らいぶらり
Tracked: 2005-11-04 21:11

ハリー・ポッターにはまるわけ
Excerpt:  さて、何からはじめよう・・・あまりにもありきたりだけど、今をときめく物語といっ
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Tracked: 2006-10-23 18:56
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