2005年12月01日

たったひとつのプロット

 
小説「ハリー・ポッター」探求
パウル・ビュルヴェニヒ著 / 谷口 伊兵衛訳
而立書房 (2004.1)


 ハリー・ポッターシリーズに関して関連書籍は数多くでていますが、その中でもこの而立書房のシリーズは専門的な研究者の見解が読めます。(ところどころ、明らかな誤りがあるのが難点です)
 この研究書はドイツの研究者の本からの翻訳で、物語のテーマについて、モティーフについてなど興味深い項目にわけられて考察しています。特にこの本の中で面白いと思ったのは第10章の「サマリー」の部分です。


 こちらには著者の引用が載っているので、ここで引用するといわゆる孫引き状態になってしまいますが、文芸学者リチャード・ジェンキンズ氏がハリー・ポッターシリーズをまとめてこういっています。
げんに存在するのは一つのプロットだけなのだ。このミステリー小説にあっては、善玉のうち一人は悪玉だと判明するし、また悪玉の一人は結局善玉だと分かるのであり、四巻ともすべて、小さなヴァリエーションはあれ、このパターンにぴたり適合しているのである。
前掲書 P195

 ここで、各巻を振り返ってみると、確かにこの単純化されたプロットがハリー・ポッターといえるように感じます。どの巻も謎解きが含まれていますが、結局のところ「真の敵は誰なのか?」が最後に明らかにされる物語なのです。その真の敵(悪玉)が巧妙に隠されているので、最後に読者はあっと驚く仕掛けになっています。ハリー・ポッターシリーズの物語のもっとも単純化した部分での面白さはここにあるのだということに気がつく文章でした。

 もう少し詳細に見ていくと、1巻では善玉だと思っていた「クィレル先生」が実は悪玉で、悪玉だと思っていた「スネイプ先生」が善玉だったということになります。同様に見ていきます。善悪という言い方ですが、善はハリー、ダンブルドア側であり、悪はダンブルドア、ハリーを妨げる敵という広範囲の意味になるかと思います。単にヴォルデモート側とは言い切れません。

1巻 善→悪 クィレル
   悪→善 スネイプ

2巻 善→悪 トム・リドル
   悪→善 ドビー

3巻 善→悪 スキャバーズ(ピーター・ペティグリュー)
   悪→善 シリウス・ブラック

4巻 善→悪 偽ムーディ(バーティ・クラウチJr.)
   悪→善 ダームストラング、カルカロフ(?)

5巻 善→悪 クリーチャー
   悪→善 

 4巻、5巻のところは少し曖昧です。4、5巻で敵と思われていた人物で実は味方だった、というキャラクターが即座に出てきませんでした。(これだ!と思う人物がいたでしょうか?)味方だと思っていたのに裏切られた!というキャラクターはどの巻でもすぐに思いつきました。そして物語のラストで明かされるという形式になっていたと思います。
 この法則は6巻、7巻でも同様なのでしょうか?(6巻はまもなく明らかになりますので、6巻についてのコメントはご遠慮ください) 7巻目でこの法則が当てはまり、「実はヴォルデモートは味方だった」という大どんでん返しはないと思いますが、ふと考えてしまいました。まさか、ね? ないと思いますけど、ハリー・ポッターシリーズは先がわからないのが魅力です。 
posted by kmy at 19:20| Comment(0) | TrackBack(0) | 物語周辺考察 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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